多動症候群Q&A
子どもの様子を見ていると、いつまでも多動の状態が続くようで不安です。 多動はいつかは消えていくものなのでしょうか?
多動症侯群の特徴的な行動を、一つ一つ丁寧に修正していくことによって、行動の悪化を防ぎ、徐々に「落ち着き」のある状態にすることは可能です。 また、激しい多動は小学校の低学年までで、ほぼおさまることが、これまでの例でわかってきました。多動とは決して固定的なものではありません。発達と共に変化します。一生多動ということはなく、ある時期から変化していくことはたしかです。ただし、放っておくと多動が情緒の混乱を生んでしまうことも多く、適切な対応、指導は欠かせません。

多動症候群を早期発見することはできますか?
とても難しい問題です。お母さん方からは、わが子が歩いたらと思ったら、走るように動き回り、あまり目が離せない状態が続いたのでおかしく思った、という話をよく聞きます。一般 的には、歩くようになる前の段階で、「だめ・いけません」といった「禁止のことば」が理解できるのですが、他動の子はそれがわからないことが多いようです。その他、ある場所では落ち着いて遊べるのに、ある場所では極端に落ち着きがなくなってしまうことがあります。もしもその差が著しいときには、多動症候群の可能性もあります。「多動」とあまり早い時期に判断するのは危険ですが、専門医に相談し、必要ならば、子どもの状態に合わせ、適切な指導・対応を行っていくことが、多動の抑制につながることはまちがいありません。

女の子は多動症候群にならないのですか?
統計的に、多動症候群の男女比はおおよそ6対1といわれています。もっと男児が多いように思えますが、女児は目立たないためのようです。現実には私たちのところに、少ないながら女の子で多動症候群の子が通 ってきています。女の子の場合、多動症候群であっても、男の子に比べると活発的な動きとして表に現われず、乱暴な行動も目立ちません。こういう点で実際の割合より女の子が少なく思えるのでしょう。

自閉症と言われたことがあります。どう違うのでしょうか?
多動の子のなかには、言葉などでコミュニケーションの遅れがあり、社会性が未発達な段階では、自閉症と似た様な状態を示す子がいますしかし、適切な指導で応答が取れるようになってくると、情緒面 での交流が感じられるようになってきて自閉症との違いがはっきりし出してきます。実は、自閉症の子どもでもこのことは同じで、人との関係が取れるようになり始めると、徐々に感情が表に現わせるようになってきます整理すれば、多動症候群は行動の障害が主となり、自閉症は人の感情の読み取りや交流の問題が全面 に立つとも言えます。なお、人から学べないために知的な遅れが目立つ子もいます。こういう子も含め、いうまでもなく指導が必要となります。

薬によって多動はおさまるのでしょうか?また病院にいく場合、何の専門医に相談したらよいのでしょうか?
薬が多動状態に有効なことがあります。動きを抑えれば学習もでき、理解も進んで、落ち着いていく場合もあります。ただし、薬には副作用が起こる場合も考えられますので、医師との相談が大切です。他だ薬に対して、極端な拒絶感や拒否感をもつのも問題だと思います。病院では児童精神科、小児精神科の医師に相談してください。 (ただ現状では「多動症候群」の認識が医療機関でもまだ遅れています。多動の子をよく診たことのある医師への相談ができれば一番よいのですが・・・)。

単に落ち着きがないのか、それとも多動症なのか、何を目安に判断したらよいのでしょうか?
多動症の様子は一人一人違っていますので判断はむずかしいともいえますが、たくさんの多動症候群の子どもを診ていると、実は共通 した要素・行動特徴があります。 多くの子どもを診た専門医に判断をゆだねたほうがよいでしょう。医学的には、たとえば子どもの状態が(DSM-・)や(ICD-10)で示された診断基準に当てはまる場合を多動症候群と診断いたします。

発達障害を診断するためのテストのようなものはあるのですか?
多動に限らず発達障害を診断するさまざまなテストがあります。知能テスト・行動評価表などで、医療機関や教育相談、児童相談をする場合などで行われています。ただ、多動症候群かどうかということを一回のテストで判断するのは特に困難です。 テストは、特に幼い子の場合、一回の結果だけではなく、テストのプロセスの中で どんな行動を示すかを重視し、診断のための手がかりを得ることが大切です。

家庭での多動があまりにも激しい場合、施設などに預けることを考えたほうがよいのでしょうか?
家庭から切り離す子どもへの影響を考えるともずかしいところですが、たとえば多動の原因が家庭の中にあった場合などは、環境を改善したり、環境を変えることで激しい多動状態が軽くなることも十分考えられます。医師とよく相談したほうがよいでしょう。また、親子の間軋轢が厳しくなってしまったときには関係を一旦修復するために、病院なり施設等の利用も考えられますが、それは慎重に判断していくべきだろうと思います。

子ども自身は、自分が他の子に比べて「落ち着きのない状態」にいることを理解しているのでしょうか?
知的な発達にあまり問題がない場合、自分の行動をある程度モニターできる子が、5・6歳くらいになるとほとんどだと思います。自分の状態をわかっているだけに、逆に「自己評価がどうしても低くなってしまう」という問題が起きてきます。自分がどんなふうに見られているのかをしっかり感じているからこそ「人から低い評価を受ける自分はだめだ」、というふうに思ってしまっているようです。 そういう気持ちを取り除いてやり、自分はきちんとした行動をとれる存在であるということに気付かせることが、わたしたちの仕事、大人の役目であると思っています。

叱ったり、怒ったりばかりしている自分に気づき、反省することがよくあります。子どものために、どのような気持ちで接するように心がけたらよいのでしょうか?
子どもがいうことを聞かず落ち着かないと、イライラしてしまったり、いけないと思いながらも叱ってばかり・・・ということは、日常でもよくあることです。ただ、多動症候群の場合、その行動がわざとではない、ということは、おわかりいただけると思います。落ち着かないことに対して、子ども自身も非常に苦しんでいる、と感じています。いけない行動、危ない行動をしたときには注意したり、叱ることももちろん必要ですが、それだけではなくて、きちんと話しが聞けたら認め、やるべきことがきちんとできたらほめてやることにこそ重点を置いてください。なぜ怒られるのか、なぜほめてもらえたのか、基本的なことをきちんと理解させながら対応してください。子どもの表の行動だけで、感情的になるのではなく、理性的につきあう部分が必要だと思います。

対人関係のトラブルを起こしてしまうことが心配です。回避する方法はありますか?
衝動的で興奮しやすい人は大人でもおつきあいが難しいものです。それは、子どもも全く同じです。友だちや大人と遊ぶときも、衝動的だったり、興奮しやすかったりする子どもだと、まとまった遊び。安定した関係を築くことがむずかしいと思います。対人関係のトラブル回避のためには、子どもたちに「こういうふうに遊ばなくてはいけない」「こういうふうに仲間との関係をつくらなければならない」というように具体的な「行動」を教えていくことが一番だと思っています。

多動を改善するための訓練は、どのような所で受けられるのでしょうか?
現状だは、まだまだ多動症侯群への一般 的な理解は進んでいません。このために多動症候群を診断したり、訓練の必要性を考えている機関も少ないと思います。もっと広く、きちんと多動の子を理解してもらう必要があると感じたからです。多動症候群の子どもたちへの理解がすすみ、適切な指導・教育が行われる場所が広がることを期待するところです。

家庭で訓練を行う際の注意点を教えてください。
「多動症侯群の子ども」、と一口に言っても、一人一人性格も違えば、理解力の段階も違います。それに多動の状態も、年齢が違えばさまざまです。注意点といっても一概には言えません。なお運動については、その子にあった方法、時間を決め、規則的、持続的に続けていくこと、他のことに気を散らせないように家族全員で協力することが大切です。子供の力を信じ、できたことはきちんと評価する。うまくいったことを親子で喜びあう、気持ちやかかわりを大切にしながら行っていくようにしてください。

適切な訓練、療法がないと多動は治らないのですか?
多動な状態は一つの原因からだけ引き起こされているのではないかと思われます。ですから、これさえやればという特効薬的な指導方法はないといえます。子どもにあったわかりやすい指導が続けられていくと、外面 的な行動だけでなく、内面での落ち着きが出てくることにその内に気付かれることと思います。訓練がないと治らないかといえば、行動的な落ち着きはこれまでくりかえした通 り、年々見られるようになります。ただ、衝動性などはなかなかおさまらず、時には思いもよらないような行動をして周囲を驚かせたりすることがあります。衝動を適切なレベルでコントロールできるようになるのには、指導・訓練が必要と思います。

|本のご紹介|
※参考文献 すずき出版
  落ち着きのない子どもたち多動症候群への理解と対応
著者 石崎朝世


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